昨年読んでよかった本 3
ベッキー・アルバータリ/著 三辺律子/訳『サイモンvs人類平等化計画』岩波書店
ゲイである事を周囲の人(家族にも)に言えずにいたサイモンは、密かに同じ学校の生徒とメールのやり取りをしている事をクラスメイトに知られ、サイモンの幼馴染との橋渡しを脅迫される。
文章を読んでいくと、ふと、ライ麦畑のホールデンを思い起こさせるようなところがあるが、それは現代の少年(青年)とも共通なところがあるからのだろうな、と思った。
会話文がとてもいい。
訳者の三辺さんの腕だろう。
メールのやり取りをしながら思いをつのらせたり
劇の練習を友人たちとしたりする日常の中で
「カミングアウト」ってなんだろうと考える。
メールのやり取りでどきどきしたり
相手の事を想って胸がキュッとなる、なんて
普通の恋愛だ。
長い友達だと思っていても、実は知らないこともたくさんあって
驚かされることもいっぱいある。
それと、「LGBT」だったということと、どんな違いがあるんだろうか。
ゲイである自分ばかりがカミングアウトしなければいけないのはなぜ?
と思うサイモンの気持ちはなんとなく理解できる。
誰だって人に知られていないこと、秘密にしたり知られたくないことがあるだろう。
それを、自分だけがわざわざカミングアウトという形であらわさなければならないのか?
また、人に知られた後の反応を想像する怖さもある。
自分が大好きな人たちならなおのことだろう。
そんなリスクとあわせて、人類はもっと平等になるべきだ!と思うサイモンの気持ちは
理解できる人も多いのではないか。
そういうたとえを持ってきて描かれたこの物語は、とっつきやすく理解しやすい物語なのではないだろうか。
ラストのほうでサイモンのキラキラした幸せな恋愛の様子が描かれ
ハッピーな気持ちになる。
友達や家族との関係性もとてもいいと思った。