60代の暮らしと本のこと

60代、仕事と暮らしと本のこと

私の2016年のワースト絵本で思ったこと



















私の参加しているブックトークの会で
毎年初め、前年に自分が読んだ本の中のベストとワーストを発表する
という事をしています。

本当は、公共図書館の集会室を借りて参加者が集まった中で行うものですが
平日で私は勤務があり、学校司書を始めてからほとんど参加できていません。
時々メールで参加させていただいているくらい。

今回は、普段自分が読んだ本にはほぼないワーストが出てきたので
ぜひメール参加しようと思い、リストを送ったのでした。

ワーストは、自分が読もうとしたのではなく
人に読んでほしいと言われて読んだ絵本1冊と
評判になっている絵本作家の絵本1冊。
(これは評価が分かれていた)

最初の絵本は全く知らずに、手渡されて初めて読みました。
これはもう、最初から驚いた絵本。え??なに??


以下、ネタバレになりますが

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まさか、配達屋さんが、いきなり自分の「心臓」を落として
(空を飛べる設定です、ファンタジーなのでね)
見つからないから「あきらめて行ってしまった」
なんてことが!!!???

配達屋さんにとって、その「心臓」の役割は何なの??
子どもにとって「心臓を無くす」というイメージは、
恐ろしいことで、「死」を意味することにつながってくると思うのですが
そんなに簡単にあきらめていいの?

で、その落ちた心臓から生まれてくるのが「ゴミ人間」
この名前も…

4000メートルの高い崖に囲まれて
(子どもがいきなり4000メートルと言われて想像できるのか疑問)
外の世界を知らない煙突の煙だらけの町に「漁師」とか…

どのようにして漁に出ていたのかは解説されず
ただ最後の方で、船に風船をつけて飛ばすことで
もしかしたらこんな風にして外の世界へ漁に行ったのかな、とは想像できる程度

子どもたちがののしる場面でも、言葉の痛さの方が先に立ってしまいました。

ラストはこうと考えていたのかもしれませんが、
こういう形でなくてはいけなかったのか疑問も残ります。

つまり、会いたかったお父さんに会う、という物語なのか
お父さんの言った言葉を信じる、という物語なのか
プペルは何者だったのかを知らせる物語なのか
言いたいことが最終的に何なのか・・
本当の主人公はだれだったのか…

全体的に、話があちこち飛んでいる印象もあり
また、ゴミ人間やもう一人の少年の視点に行ったり来たり
はたまた、物語の進行役の視点になったりして
大人でも、読みにくかったです。(私だけ?)

作者のいいたいことは、多分こうだろうなとわかるのですが
その文章の雑然とした感じや、絵もあまりにも細かすぎて
子どもたちが見る読むには情報量が多すぎるな、と感じます。

私は、これは「動画」で見るものではないかと感じました。
背景が細かすぎて登場人物を見るのが苦しいのですが
動画なら背景が細かくても、登場人物は動いているからわかりやすいと思います。
声が聞こえて、登場人物の声が変わればわかりやすいです。

絵本であれば、もっと子供たちに
わかりやすく伝わりやすい言葉を練り上げて伝えることもできたはずですが
どうしても「安易に書き綴った」としか私には思えない内容でした。

冒頭の言葉も、全体の流れの中で必要な言葉だったのか?と疑問が残ります。

これは子どものための絵本ではない、と感じるし
私には、絵本としても(体裁は絵本)いいとは思えないものでした。

いまは、簡単に『絵本』という名前で売れてしまう現象が起こっています。
外見だけの、雰囲気のいい、簡単な絵本が非常に多く売れていると思うし
また、売れるからこそ出版されるのでしょうが…。

大人がそれほど癒しを求めていたㇼ
難しい言葉、たくさんの言葉が羅列する小説や物語よりも
言葉が少なくてわかりいやすい絵本に流れてしまう
というのは、何か非常に大きな問題を含んでいるように感じます。

子どもが求めているわけではないと思います。
大人がそれを与えるから、子どもがそれを「いい絵本」と思ってしまう
ここにも大きな問題があると思います。

子どもだけでなく、大人自身も読む力が落ちているのではないでしょうか。

ワーストの中には
「ママがおばけになっちゃった」のぶみ(講談社)や
「おやすみロジャー」カール=ヨハン・エーリン(飛鳥新社
などがあります。

どれも、とても売れている絵本です。

そして、勤務校の先生の一人が
「おやすみロジャー」を、いい絵本だ、と言いうのを聞いた時
何をもっていい絵本としているのか、その先生の意識がわかってしまいましたよ・・。

せっかく、他にいい絵本が出ているのに
いい児童書やYAも出ているのに

今の絵本業界(出版界?)残念としか言えません。